2009/06/02

かけっこ

大体、集中して走っていたら、周りの声なんて聞こえないだろう。それに競技中なら、立ち止まったりはしないよね。お父さんお母さん方の声が聞こえても、手を振り返すぐらいならともかく、本当はそれもしない方がいいんだけど、後ろを振り返ることなんてないんだ。

友達が転んでいても、自分で立ちあがるからいいんだよ。怪我してたって、六年生の救護班が助けてくれる。だからかけっこの時は、何も心配しないでただ走ればいいんだ。あそこまでトップだったんだぜ。一等賞なんだよ。勿体ないじゃん。

立たせたらレースに戻れよ。泣いてたけどさ、泣きながらだって走れるよ。脚を引き摺って歩くのに、付き合う必要何てないのさ。彼にだってプライドがあるだろう。手を貸して貰うのは、かっこわるいと思っているかもしれないよ。

*****

本格的に雨が降ってきた。運動会の得点競技は終わっていたので、児童のみの閉会式を体育館で行うことになった。一度帰宅してから、傘を持たない息子を迎えに行くことにした。

昇降口前で待つと、程なくして息子が出てきた。黄色い傘を渡して家路につく。

傘の花ざかりになっている校庭は、何とも歩にくい。校門を過ぎてちょっと落ち着いた。


「あのさあ、パパ。80m走、ビリだった」

あれ、ビリから二番目じゃなかったの?

「見てたならわかるでしょ。三人で走ったから、ビリでも銅メダルなんだ。三人組はお買いとく」

転んだ子がいたじゃん。それでもビリなの?

「立たせてあげたら『ビリは嫌だ』って泣くんだもん。一緒に走って、最後背中を押してあげた」

そうだったんだ。だからビリになっちゃったんだね。

「でも三等賞リボンをもらったよ。ほら、これ」

よかったねって、なんで二つもあるの?

「こっちは一等賞のリボン。一緒に走った子が、かっこわるいからあげるっていうから、貰っといた」

ふうん。何でかっこわるいと思ったのかな?

「知らないよ」

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父親として相当かっこわるいな。沢山あった言いたいことが、何一つ言えなかった。

ま、いっか。


 
Posted from MixiDock mini


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