栗色のショートヘアと白いソックスがトレードマーク。
ソックスがずり落ちても気にしない。
「それ、あたいのチャームポイントなんだ。よろしくね」
ハルちゃんは、ちゃっかり女の子。
お兄ちゃんのボールをちゃっかり貰っちゃう。
唸られたって返さないよ。
「もう取っちゃったから、あたいンだよ」
ハルちゃんは、大胆な女の子。
一目惚れを信じて追いかけた。
お母さん代わりの段ボール箱を後にして、大好きなお兄ちゃんを追いかけた。
ハルちゃんは、お兄ちゃんと一緒に暮らし始める。
「これでいつでも一緒だね、お兄ちゃん」
ハルちゃんは、一途な女の子。
お兄ちゃんがいなくなって八年、他の男の子に気を許したことはない。
お兄ちゃんとおなじゴールデンレトリバーの赤ちゃんが、ハルちゃんの家にやって来た。
ハルちゃんはお姉ちゃんになった。
ハルちゃんは弟に礼儀作法を教え込んだ。
あっという間にお姉ちゃんよりも大きくなった弟だけど、
ハルちゃんの言うことをよくきく立派な犬に成長した。
子供を産まなかったハルちゃん。
それでもちゃんと母親の役割を果たした。
ハルちゃんは、おばあちゃんになった。
軽やかに跳ねるような散歩が、時おり立ち止まり、季節に耳を澄ませる散歩になった。
玄関先で弟の帰りを待つことが増えた。
弟は嬉しそうに外の様子を姉に語る。ハルちゃんはそれを愉しそうに聴いていた。
ハルちゃんは、病気になった。
もう外に出ることはない。ソファーの上で居眠りをしながら一日を過ごす。
時々寝言のようにむにゃむにゃ吠えるハルちゃん。
どんな夢をみているのかな。
ハルちゃんは、星になった。
ちいさく「うぉん」と吠えて、すぅと息を吐いて、そのまま天に昇った。
わらっているような、眠っているような、安らかな表情。
きっと、お兄ちゃんが迎えにきてくれたんだね。
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