2007/07/23

少年少女医学講座(2)

講座の後半は、実際の医療に触れる。内容は

・「ダ・ヴィンチ」操作体験。
・豚の心肺に触れる実習。
・超音波診断装置の実習。

の三つである。子供たちはグループに分かれ、それぞれの順番で実習を行った。

■「ダ・ヴィンチ」操作体験

ダ・ヴィンチは操作部とロボットアーム部からなる。ロボットアーム部は二本の腕に加え手術部位を撮影するカメラがあり、立体画像を操作部のディスプレイに送り込むのだ。
「テレビとは全然違う。ちゃんと奥行きがわかるんだよ。」

写真
操作部(と、娘^^)

従来のやり方では30cmも切開し肋骨も切断する必要があったのが、「ダ・ヴィンチ」ならば肋骨の隙間に三カ所、3cmほどの切開で済むとのこと。患者への負担は明らかに低い。

三本のアームは自由自在に動く。
「思ったときに思っただけ、思い通りに動くよ。」

自在に動くロボットアーム部

■豚の心肺

豚の心臓は人間の物とほぼ同じ大きさ。病院は豚の心肺を二組用意し、子供たちに触らせていた。気管には空気を送り込む風船がつなげられ、肺がふくらむ様子が観察できるようにしてある。

http://mixi.jp/view_album_photo.pl?album_id=2705274&number=3779501066&page=1
※苦手な方もいると思うので、画像はリンクにしました。

「心臓と肺では感触が全然違うんだよ。心臓は結構硬くって肺はふにゃふにゃ。」

医療用のディスポーザブル手袋を付けさせ、体験後には病院で使っているものと同じアルコール消毒液で手を消毒する。このような細かい部分も医学に触れる機会だと感じた。

■超音波診断装置

病院で実際に使われている超音波診断装置を使い、希望者の心臓を撮影する実習。臨床検査技師の指導の下、子供たちがプローブを操作していた。

写真
超音波診断装置

■Q&A

プログラムが終了してから質疑応答の時間が設けられた。
最初のうちは固くなっていた子供たちもうち解け、活発に質問するようになってきた。印象に残った物をいくつか。

Q:超音波を使うとき、なぜゼリーをつけるのですか。
A:超音波は空気の層があると機能しません。そのためゼリーをつけて体と装置の間の空隙をなくします。(山科先生)

Q:医学部に入学するには、どんな教科を頑張ればいいのですか。
A:どんな教科も万遍なく、遊びもスポーツも一生懸命やって下さい。(見学中の研修医)

Q:外科に興味を持ったのですが、女性が外科医になることは多いのですか。(女の子)
A:今の医学生の大体3割が女性です。卒業後の研修で専門を決めていくのですが、その中で外科の女性比率が特に低いと感じたことはありません。先ほど質問に答えてくれた研修医(女性)も外科志望です。(渡邊先生)
宇宙飛行士の向井千晶さんは心臓外科医です。(山科先生)

Q:医師の仕事をしている上で、「ウエッ!」となっちゃうことはありますか。(うちの娘)
A:手術を初めて見学した研修医が倒れてしまったことがあります。それ以来、その研修医がおかしくなったことはありませんから、一度倒れてしまえばもう大丈夫なようです。(渡邊先生)

Q:失敗してしまったときはどうするのですか。
A:戦闘機のパイロットは墜落させてしまったとき、帰還してすぐに飛ぶそうです。さもないとどんどん怖くなり、飛べなくなってなってしまうのです。外科医もパイロットと同じで、うまくいかないことがあっても、すぐに次の仕事に取りかかります。仕事に集中することで恐怖心を回避すると同時に、人を助けることでやる気を保つのです。(渡邊先生)

※私が解釈したままに書いています。不正確なこともあります。よって文責は私にあります。

■その後

娘は物心ついた頃から「お医者さんになりたい」と言っていた。中学に入り自分の道を考えるようになり、医師になることがいかに難しいかを認識するにつれ、将来の希望がだんだん曖昧になっているような気がしていた。

この時期に最先端の医学に触れる機会を得、娘の意識は確実に変わったと思う。これまで漫然とイメージのみで憧れていた医師像が、現実の物として目の前に現れたのである。彼女が得た最大のものは、将来の自分のイメージであり、目標である。

「目標」は彼女の生活全体のモチベーションを、高いレベルで維持してくれることだろう。
このような機会を提供してくれた東京医科大学病院に、感謝して止まない。


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