2008/01/27

普通救命講座




普通救命講座に行ってきた。内容は、心肺蘇生の方法とAEDの使い方の実習である。

医師を目指している娘が挫折気味なので、それのてこ入れという下心もある。しかし、最近救急医療について考えることが多いので、少しでも実際の現場感覚を理解しようと思ったのだ。

東京都在住、在勤者の場合、受講資格があるのは東京救急協会主催の講座となる。他の自治体にも同様の講習会があり、例えば川崎市の場合、川崎市消防局が応急手当講習会を主催している。

麹町消防署の講堂で、受講生が6人ずつ6グループに分かれて、今回の講習会は行われた。1グループにシミュレーター人形が2体配置され、3人一組で順番に実習を行うのだ。

実際の手順については別のサイトを参照していただきたい。調べた中でわかりやすかったのはワンポイント救急講座と、東京救急協会の動画である。

ここでは私の印象に残ったことを、いくつか挙げるに留めたい。

・心臓マッサージは思ったよりも力がいる。腕力で押すのではなく、患者の胸に体重を乗せる感覚で行うのがいいようだ。

・人工呼吸は口を大きく開いて、患者の口を覆うこと。さもなくば、脇の方から空気が漏れてしまう。吹き込む量は胸の動きがわかる程度。

・感染症予防のため、他人の血には触れない。必要な場合は、ビニール袋で手を覆うなどの工夫を行う。

・一歳以上八歳未満の小児にAEDを使う場合、電極の位置は、心臓を挟んだ胸と背中とする。

などである。

実際には単純な手順だが、人の命が掛かっていることから真剣に実習が行われる。わずか三時間の講習会だが、娘は結構疲れたようだ。修了証である「救命技能認定証」を受け取り帰路についた。

帰り際、娘は講師に質問をしていた。「蘇生に失敗したらどうなるのか」というものだ。

その気持ちが心肺蘇生を躊躇させることは、十分にあり得ることだと思う。去年末の読売新聞に「AED「その時」使えますか・「失敗したら…」ためらう例も多く」という記事があった。確かに善意で行う行為にしては責任は重い。

配布されたテキストの巻末に「応急手当の実施による法的な責任」という文章があった。

 応急手当を試みたことにより、結果的に救命できなかったときなど、法的な責任を問われるのではないかと心配になるかもしれません。
 アメリカ合衆国の各州には「よきサマリア人法(Good Samaritan Law)」と呼ばれる法律があり、緊急時に善意から行った行為は、その行為に過失があったとしても責任は問われないとされています。
 わが国では、これについて直接に定めた法律はありませんが、市民が善意で実施した行為に関しては責任を問われることはないと考えられています。
 事実、これまで手当を行ったことによって責任を問われた事例はありません。

 心肺蘇生などの救命処置は、法的な義務はありません。しかしながら、傷病者を救うためには必要不可欠なものと言えます。
 もしあなたが、救急現場に居合わせたときには、ためらわず勇気を持って実施することが強く望まれます。傷病者の命は、居合わせたあなたに託されているのです。


去年娘が受講した「少年少女医学講座」に、こんな質疑応答があった。

Q:失敗してしまったときはどうするのですか。
A:戦闘機のパイロットは墜落させてしまったとき、帰還してすぐに飛ぶそうです。さもないとどんどん怖くなり、飛べなくなってなってしまうのです。外科医もパイロットと同じで、うまくいかないことがあっても、すぐに次の仕事に取りかかります。仕事に集中することで恐怖心を回避すると同時に、人を助けることでやる気を保つのです。


これは医師志望者を対象にしているので、今回の講習会とはいささか状況が異なる。しかしながら双方とも、人を救う勇気の大切さを訴えかけているのである。

正確な知識と経験が自信を生み、自信が勇気を作り出すと思う。今回の経験が実際に使われなかったしても、娘の心の糧にはなったのではないだろうか。


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